令和元年 選択Ⅲ−1

1-1 機械設計【選択科目Ⅲ】

Ⅲ-1 我が国では、2010年から2025年までの15年間で、社会全体の高齢化率 (65歳以
上人口の割合)が23%から30%に大幅に上昇すると予想されている。2025年時点で介護
職員は34万人不足する見込みである。このような状況の中で、高齢者の移動、入浴,排
泄、他の支援の際に、介護者の負担を軽減するための介護機器、歩行等を補助する介護機
器,認知症の人を見守る介護機器などが開発されている。新たな介護機器を開発し、普及
させるには、介護される高齢者と介護者の双方のニーズを把握し、それに応じた機器を開
発することが必要である。今後もこのような介護機器の役割はますます重要になると考え
られ、その開発には最新のロボット技術や情報処理技術などの活用が期待されている。


(1) 介護機器の開発・設計・導入・普及に関して、具体的な介護機器の例を1つ挙げ、機
械設計の技術者としての立場で、多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決
策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答例

1 具体的な介護機器と開発から普及までの課題

( 1 ) 具体的な製品
 リクライニングベッドとする。

( 2 ) 課題の抽出

①安全の観点
 高出力の動力で人に直接作用する為、非常に厳重な安全対策を施す事が課題である。一度の事故で製品や企業に深刻な評判の低下を招き、損失を与えるので慎重に安全対策を行わなければならない。しかし、全ての故障モードを設計段階で想定する事は難しい。繰り返しDRやリスク評価を行い、確実な安全対策を行う事が課題である。

②操作性の観点
使い易いインターフェイスにする事が課題である。主なユーザーは介護が必要な人である。その人が使用する事を考え、製品お操作は直感的で、わかり易いものでなければならない。しかし製品の開発担当者は機械に詳しく、介護を必要としていない状態にあるのがほとんどである。その為、開発者の状態とユーザーの状態に乖離があり、真に使用者の身になって製品の操作性を評価できない。いかにユーザーの身になって操作性の良い製品を開発するかが課題である。

③コストの観点
製品のコストを抑えなるべく安価に販売する事が普及に繋がる。しかし、安全対策を行わなければならない事や、ベッドは大きいので生産設備も大きくなりがちで費用がかかるという問題がある。開発から販売まで全体を通してコストを削減していく事が必要である

2 . 最重要課題とその解決策

( 1 ) 最重要課題

前項③のコストを削減する課題を最重要課題と考える。コストを削減する事で利益が上がり、更に利便性が良くなるように製品を改良できる。企業の利益の身でなく、社会の利便性にも繋がるからである。

( 2 ) コスト削減の解決策

①部品の形状最適化
 上記を行う事で部品の余分な所を減らし、材料費を安くできる。例えば、形状最適化ソフトウェアを使い、今までの固定概念に囚われない発想で考えるなど、デジタルツールを駆使してコスト削減に取り組む。

②C A E を積極的に行う
 強度解析、動作シミュレーションを行う事で試作の回数の削減や、生産開始後など最終段階での不具合発覚による手戻りをなくす事で設計効率を上げる。これにより、設計費を削減する。

③輸送費の削減
 最終的な荷姿まで想定した設計を行う事で輸送車両のデッドスペースを減らし、積載率を上げる、部品点数を減らし部品の輸送の総量を減らす等を行い輸送費を削減する。

④会社全体の業務の効率化・省人化を行う
 A I 等のデジタル技術を使って生産管理や資材の調達を効率化・省人化する、生産現場においてもA G Vや自動運転車両を使い物流の省人化を図る、生産ラインの自動化、これらの方法で総合的に人件費を削減する。

3 . 新たに生じうるリスクとその対策

( 1 ) 新たに生じうるリスク

コストを削減し妥当な価格で販売できるようになり製品は広く普及する。そうすると、いずれその製品は消耗し、廃棄される為、廃棄物の量が増えてしまい、環境汚染を引き起こすリスクがある。具体的には廃棄物焼却の際の有害物質の発生、埋立て処分のために土地を使用されてしまうといった問題が考えられる。

( 2 ) 対策

①製品を再利用できる体制を作る
 ベッドのフレーム、廃棄時にまだ使用可能なセンサ類は再利用する。廃棄ではなく回収するビジネスの仕組みを作り、製品を再利用する循環型の製品ライフサイクルを確立する。これにより廃棄物を減らす事ができる。

②リサイクルし易いような設計をする
 リサイクルは素材ごとの分別が基本である。その為素材ごとに分解し易い製品設計としておく事でリサイクルを促進する事ができる。 以上

・課題の整理
①安全の観点:慎重に安全対策を行う課題
②操作性の観点:直感的でわかり易い操作にする課題
③コストの観点:開発から販売まで工程全体でコストを削減する課題

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